こんにちは。あなたの自分づくりをちょこっとサポート「しまらぼ」のしまもとです。
人生100年といわれるこの時代。自分の人生をどのように生きていくか、価値観が多様化する現代にあって、自分に合った進路を選択していくことは容易ではないと思います。
そのような中、現在、小学校から高校までの各学校段階、そして、大学を通じてキャリア教育というものが展開されています。
ここでは、キャリア教育の概要を説明するとともに、キャリア教育の実際として、既存の部活動が果たす役割について深掘りしていきたいと思います。
キャリア教育とは
まず、キャリア教育は中央教育審議会の答申によると、以下のように定義されています。
一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育
また、このキャリア教育の意味をより深く理解するためには、キャリア発達の意味を確認しておく必要があります。そのキャリア発達は、同答申の中で次にように定義されています。
社会の中で自分の役割を果たしながら,自分らしい生き方を実現していく過程
これら2つの定義を要約していうと、キャリア教育とは以下のように説明をすることができると思います。
社会的・職業的自立に必要な基盤となる能力や態度の育成を通して、自分らしい生き方の実現を促す教育
下線部の自分らしい生き方とは、自分の価値観や興味・関心、考え方や行動の仕方といった特徴がよく表れている生き方と表現することができるでしょう。
もっと簡単に表現すれば、キャリア教育とは自己理解を深めながら自らが望む生き方を決め、それを実現していける力を育むことを目的とした教育といえるのではないでしょうか。
◆ カテゴリー:自己理解
キャリア教育を通して育成する能力や態度
次に、キャリア教育の中で育むことが求められる能力や態度(以下、“能力”と表記)について見ていきたいと思います。先の表現でいえば、自分が望む生き方を実現していける力ということになりますね。
そんな社会的・職業的自立に必要な基盤となる能力は基礎的・汎用的能力と表現され、下の図の右側にある4つの側面から構成されています。
参考 : 文部科学省「キャリア教育とは何か」説明資料
当初、キャリア発達にかかわる能力は図左側の4領域8能力とされていましたが、行政側と教育現場とで各領域や能力についての共通理解が十分に得られず、以下に示す課題が指摘されていました。
- 提示されている能力は例示にもかかわらず,学校現場では固定的にとらえている場合が多い
- 領域や能力の説明について十分な理解がなされないまま,能力等の名称(「○○能力」というラベル)の語感や印象に依拠した実践が散見される など
参考:文部科学省「キャリア教育とは何か」説明資料より
そのような「4領域8能力」をめぐる実践上の課題を克服し、よりよい実践に向けて改善を図るための枠組みとして提示されたのが基礎的・汎用的能力ということになります。
個々の能力の詳細について、文部科学省による説明資料「キャリア教育とは何か」における記述をもとに、順に説明をしていきたいと思います。
人間関係形成・社会形成能力
価値観や考え方等の異なる多様な他者と円滑な人間関係を形成しながら、自ら他者に働きかけ、新たなコミュニティーを形成していくことができる能力を表します。
具体的な能力要素として、他者の個性を理解する力、他者に働きかける力、コミュニケーション能力(スキル)、リーダーシップ、チームワーク等が挙げられています。
最後のチームワークは、もちろん個人で発揮することはできませんので、個々のメンバーと相互理解を深めながら、チームとして成長できた先にチーム全体として発揮する形になります。
◆ カテゴリー:コミュニケーション
自己理解・自己管理能力
この能力は、自分が「できること」「意義を感じること」「したいこと」について、社会との相互関係を保ちつつ,今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動することを表します。
同時に、自らの思考や感情を律し、かつ、今後の成長のために進んで学ぼうとする力を意味しています。
具体的な能力要素としては、自己の役割の理解、前向きに考える力、自己の動機付け、忍耐力、ストレスマネジメント、主体的行動等が挙げられています。
なお、自己理解を深めるとは自分軸を確立することと言い換えることができます。つまり、自らが望む未来や働き方の実現に向けて、迷うことなく・ブレることなく力強く取り組んでいく上で、自己理解は重要な役割を果たしているということです。
◆ カテゴリー:自己理解
また、現代はストレス社会といわれるように、日々のストレスに適切に対処することも重要になってきます。
生じてしまったストレスを軽減していくことも大切ですが、ストレスの原因であるストレッサー(例:コロナ禍)をどのようにとらえていくかも、同じく重要な検討課題になってくるはずです。
可能な限り身の回りのストレッサーをポジティブに・前向きにとらえていくことで、ストレス反応を抑制していきたいですね。
◆ カテゴリー:ストレス
課題対応能力
この能力は仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題
を処理し、解決することができる力を表します。
具体的な能力要素として、情報の理解・選択・処理等、本質の理解、原因の追究、課題発見、計画立案、実行力、評価・改善等が挙げられています。
特に本質を理解する力に言及すれば、これは物事を要約する力であると言い換えることができます。高度情報化社会を迎え、日々膨大な量の情報に振り回されないためにも、要約力の重要性はますます高まっていると考えられます。
◆ カテゴリー:考える
キャリアプランニング能力
この能力は社会人・職業人として生活していくために生涯にわたり必要となる能力とされます。
さらにいえば、働くことの意義を理解し、多様な生き方に関するさまざまな情報を適切に取捨選択・活用しながら、主体的に判断して生き方を形成していく力とされています。
具体的な能力要素としては、学ぶこと・働くことの意義や役割の理解、将来設計、選択、行動と改善等が挙げられています。特に、学ぶことの意義は、勉強する意味を理解することと言い換えることができるでしょう。
例えば、小学校から大学まででは16年間にわたり勉強を継続することになります。その途中では、何のために勉強をするのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。
勉強する意味を理解することは、勉強へのモチベーションを高め、それを維持する上で極めて重要なことであり、理解のタイミングは早ければ早いほど望ましいと思います。
◆ カテゴリー:考える
また、キャリアプランニングとは、本質的には自らの生き方を明確にしていく営みといえます。もっと具体的にいえば、これからの人生を通してどのようなことを成し遂げたいのか、という人生の目的を明確にすることでしょう。
子どもたちに『人生の目的』を問うことはちょっとハードルが高いと感じられますが、その判断材料として、先輩方のさまざまな生き方を提示しながら、人生の目的について問いかけつづけることは大切であると思います。
もっといえば、私たち日本人は自らのキャリアについて考える時間が圧倒的に不足しているといわれます。まずは、自分自身の人生について考えるという思考習慣を身につけるからでも良いかもしれません。
キャリア教育が推進される背景
キャリア教育が導入・推進されてきた背景には、日本の社会構造の変化が関係しています。
具体的には、少子高齢化や終身雇用制度の是非についての議論の開始、それに伴う雇用の多様化・流動化、グローバル化、価値観の多様化等です。
また、社会構造の変化により、人間関係の希薄化に伴う対人関係能力の低下、社会的・精神的自立の遅れ、自己肯定感の低下に伴う自信の喪失、将来に向けての目的意識がない等の問題が見られるようになってきました。
これら近年の若者に見られるネガティブな特徴は、新卒採用者の早期離職、アルバイトのみで生計を立てるフリーター、学校卒業後も職に就かず引きこもるというニートの原因にもなっているともいわれます。
そのため、従来の学力向上への取り組みや上級学校への進学指導に加え、社会の変化に対応しながら、自分らしい生き方の実現につながる勤労観や職業観、社会的・職業的に自立できる力の育成が求められるようになってきました。
キャリア教育と職業教育との違い
キャリア教育に似た考え方に職業教育というものがあります。ここで、簡単に両者の違いに触れておきたいと思います。
職業教育の定義は、中央教育審議会の答申において以下のように記されています。
一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育
参考 : 中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」
確認までに、キャリア教育の定義も以下に再掲させていただきます。
一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育
参考 : 中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」
すなわち、職業教育はキャリア教育よりも焦点を狭め、ある特定の職業上のパフォーマンスを発揮するための専門的な教育であるといえます。
それに対して、キャリア教育は自分らしい生き方を実現していくことを念頭に置き、そのためにどのような職業に就いていくのかを自ら決めるという能力を育成していきます。
2つの教育を行う順序としたは、キャリア教育から職業経験へという流れが良いのではないでしょうか。まずは社会的・職業的自立のための基盤となる能力の育成を先に進めていきます。
そのような自立のための土台が形成されることで、それぞれの職業の中で求められるパフォーマンスも、安定的かつ長期的に発揮していくことができるはずです。
どんなことでもやはり基礎が大切です。自分らしい生き方・働き方が実現できるとは、そこで必要な(求められる)パフォーマンスを発揮しつづけることができるということです。
繰り返しますが、そのためには基礎・土台が欠かせません。4つの能力要素の育成は、キャリア教育の中でも最重要事項であると私自身は思います。
キャリア教育の実際
このようなキャリア教育そのものは、小学校の段階から開始され、中学校から高校、さらには大学へと、個人の成長・発達に合わせて長期的に実施されています。
また、キャリア教育はある特定の活動や指導方法に限定されるものではなく、様々な教育活動を通して実践されることが望ましいといわれます。
具体的には、教室内で行われる通常の授業に加え、社会見学やボランティア活動、職場体験、就業体験ができるインターンシップ等の活動を通じてキャリア教育は推進されています。
子どもたち自身が学校オリジナルの商品を企画し、その販売を通して職業体験の機会を確保するという試みもなされています。
また、職業体験に併行して進められるべきは、やはり社会的・職業的自立のための基盤となる以下の4つの能力要素の育成です。
- 人間関係形成・社会形成能力
- 自己理解・自己管理能力
- 課題対応能力
- キャリアプランニング能力
私個人の見解では、これらの能力要素は運動部をはじめとした部活動を通して身につけることができると考えています。例えば、以下のような感じです。
性格や考え方、価値観等が異なる多様なメンバーと上手く関係を築こうとする中で人間関係形成・社会形成能力が鍛えられていきます。
また、自分に合った目標を立てるためには、自分自身の特徴や能力的な現在地を正確に把握することが必要です(自己理解の深化)。
また、必要なパフォーマンスを発揮するために、心身の体調の維持・増進に向けて自己管理能力も身についていくことでしょう。
さらに、目標を達成するためには多くの課題をクリアしていく必要があります。そこで鍛えられ、身についていく能力が課題対応能力です。
もうひとつ、部活動がこれらの能力要素の獲得を効果的に促す理由は、時間が限られているからです。
例えば、彼・彼女らは1年間という限られた時間の中で最大限の結果を出すために日々懸命に努力しています。その密度の濃い活動が、各能力要素の獲得につながっていると考えられます。
このように見ると、多くの子どもたちが参加する部活動は、明確にキャリア教育の一環(例:継続的なキャリア教育)として位置づけることができるでしょう。
むしろ今後必要なのは、部活動を通して獲得される種々の能力が、子どもたちのこれからの人生において、どのように活かされていくのかという意味付けの部分であるはずです。
◆ カテゴリー:教育・スポーツ
まとめ
この記事ではキャリア教育をキーワードとして取り上げ、その概要について説明をしてきました。
キャリア教育とは、社会的・職業的自立に必要な基盤となる能力や態度の育成を通して、自分らしい生き方の実現を促す教育と表現され、次の4つの能力要素の育成を目指していきます。
- 人間関係形成・社会形成能力
- 自己理解・自己管理能力
- 課題対応能力
- キャリアプランニング能力
また、これら能力要素の多くは、既存の部活動を通して獲得できる可能性が十分にあります。
このことからキャリア教育の特色とは、学ぶこと・働くことの意義や役割の理解、将来設計等からなるキャリアプランニング能力の育成の部分に、顕著に表れてくるのではないでしょうか。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
お時間があれば、また次の記事でお会いしましょう!
◆ カテゴリー : 教育・スポーツ
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