アクティブラーニングってなに?文部科学省が進める新たな教育の形

教育・スポーツ
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アクティブラーニングは文部科学省が推進する新たな教育の形で、同省の関連資料の中では以下のように定義されています。

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。
          関連資料◆ 文部科学省「新しい学習指導要領の考え方 用語集」

 

学習者の視点からいうと、受け身の姿勢で授業に参加するのではなく、主体的、積極的、自発的に学習に参加する形、すなわち、能動的学修がアクティブラーニングであるといえます。

今回はライフスキル教育とも密接にかかわるこのアクティブラーニングを取り上げ、その概要やポイント等について、可能な限り分かりやすく説明をしていきたいと思います。

この記事を書いた人
しまもと

法政大学スポーツ健康学部准教授 / 専門は自分づくりを支援するライフスキルコーチング / 20年以上、自分づくりのプログラムと研究に没頭する変わり者 / 大学では毎年300名以上の学生とスポーツ心理学をベースに自分づくりの授業を行う / 大修館書店による月刊「体育科教育」の巻末エッセイを奇数月に担当中

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アクティブラーニングとは

教育の形を大きく変えようとするこのアクティブラーニングという言葉が中央教育審議会答申の中で登場したのが2012年のことです。

そもそもは大学教育の質的転換を目指して打ち出された考え方でしたが、その後、小学校や中学校、高校でも導入されるなど、急速に広まりつつあります。

アクティブという言葉が入っていますが、決して、授業中に席を立って教室内を活発に動き回るといった身体を使う学習ではなく、あくまでも子どもたちが自ら学ぼうとする姿勢が強調される学習となります。

教室内におけるアクティブラーニングの学習法としては、グループ・ディスカッションやディベート、グループワーク等が有効とされています。

ここで、大学での講義を例に、上記のグループ単位での学習法を適用した場合と、学習者に向けて講師が一方的に話をする従来の講義を実施した場合の、それぞれの特徴を以下の表にまとめてみました。

 

概ね、下記のような差異が見られると考えられます。

アクティブラーニング 従来の講義形式
講師のマネジメントの量 多い 少ない
講師の教室内の移動距離 多い 少ない
成績評価の難易度 高い 低い
学習者間の交流 多い 少ない
学習の定着率 高い 低い
時間経過感覚 速い 遅い
学習者の内職の有無 無し 有り(状況による)
睡眠学習者の有無 無し 有り(状況による)

 

一番の特徴は、睡眠学習者がアクティブラーニングではゼロというところです。グループ単位での学習となりますので、授業内の活動に参加しないというケース(個人)はほぼ見られなくなります。

もう一つの特徴は、授業全体をマネジメントする講師の力量、すなわち、ファシリテーター(促進者)としての能力が多く求められるというところにあります。

また、学生たち一人ひとりが能動的に活動することになりますので、授業内の各セッションの時間配分やそれらの進捗状況について、講師は常に意識を向けていく必要があるでしょう。

学生たちの活動の様子については、それを成績評価に正しく反映させる必要がありますので、講師はクラス全体を注意深く観察していく必要があるといえます。

先に、アクティブラーニングは身体を活発に動かす学習ではないと書きましたが、講師においては、教室内を活発に動き回る必要があるといえそうです。

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アクティブラーニングで抑えておきたいポイント

ここではアクティブラーニング実施時のポイントを3つ述べていきたいと思います。分かりやすく、各ポイントで求められる内容を箇条書きで記します。

ポイント1 : 主体的な学び

  • 学ぶことに興味・関心を持つ
  • 自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、粘り強く取り組む
  • 自らの学習内容を振り返って次につなげる

 

このポイントを抑えるためには、そもそものテーマ設定が重要になってくると思います。いかに子どもたちの興味・関心を惹きつけることができるか、というところです。

 

また、そのテーマが子どもたちの今後のキャリア形成とどのように関係してくるのかという点での助言・アドバイスもあると良いかもしれません。

例えば、コミュニケーション能力に関する授業を行うならば、対人的な能力の向上に努めることが、今後、社会の中でどのように活かされていくのかについて補足説明を行うという感じです。

 

ポイント2 : 対話的な学び

  • 子どもたち同士の協働
  • 教師や地域の人との対話
  • 昔のすぐれた思想家や学者の考え方を手がかりに考える
  • これら一連の作業を通して自らの考えを広め深める

 

このポイントを抑えるためには、やはりグループ単位での学習を欠かすことができないでしょう。また、必要に応じてアイスブレイクを実施し、協働作業に適した雰囲気に誘導していくという、環境づくりへの配慮があっても良いと思います。

 

経験的に、授業序盤のアイスブレイクがその後の作業効率に及ぼす影響は決して小さくないといえます。短い時間でもいいので、必要に応じてアイスブレイクを実施されることをお勧めします。

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ポイント3 :深い学び

  • 習得・活用・探究という学習プロセス
  • 教科等の特質に応じた見方や考え方を働かせて考え、判断し、表現する
  • 問題発見とその解決を念頭においた学び

 

このポイントを抑えるためには、一つの例として、学習した知識を別の知識やこれまでに学習した知識と結びつけて自らの考えをまとめて発表させる、また、物事の判断基準となる価値観の形成を促していくという流れが有効ではないでしょうか。

必要に応じて過去に学習した内容を振り返り、現在の学習内容と結びつけて提示することで、ここでいう深い学びにつなげていくことができると考えられます。

 

以上の3つのポイントを踏まえて、アクティブラーニングは主体的・対話的で深い学びとも表現されています。何を学ぶかというよりも、いかに学ぶかが大事になってくるというところです。

いかに学ぶかという点で補足すれば、従来の授業に見られる、板書の内容をノートに黙々と記入するという作業は特に頭を使わなくてもできます。すなわち、脳が活発に動いていない学習といえます。

それに対して、アクティブラーニングでは子どもたち自身が考えることを促していくので、脳が活発に動く脳動的な授業であるともいうことができるでしょう。

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アクティブラーニングで伸ばすことができる能力

アクティブラーニングでは、専門的な知識に加え汎用的な能力を伸ばすことができると期待されています。具体的には、情報を活用する力である思考力判断力表現力です。

また、グループディスカッション等のグループワークを通しては、主体性やメンバーと力を合わせて働こうとする協働性等の形成が期待されます。

特に主体性の形成については、グループワークに入る前までに、テーマに関する自分自身の考えを明確にしておくよう、子どもたちに働きかけていく必要があると思われます。

授業時間内に自らの考えを明確にする時間が確保できないならば、予習を課してその中で事前に検討しておいてもらいます。

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加えて、グループワークを通じては、協働性の他にも、自分自身への理解を深めていくことができるのではないでしょうか。

具体的には、グループ内での自らの言動の振り返り(積極的、消極的)、自らの考えやアイディアに対するメンバーからの評価、また、自分と他のメンバーとの比較(性格、言動等)を通しての理解となります。

このような自己理解は、子どもたち個々人が定位置に固定される従来の授業形態からは、得られにくいものではないかと思います。

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アクティブラーニングが推進される背景

文部科学省がこのようなアクティブラーニングへの移行を推進している背景には、従来の知識詰込式の教育のみでは、時代の変化に対応することが困難となってしまうとの危機感があります。

高度情報化社会の到来により、知識・情報が陳腐化してしまうスピードはますます速くなり、知識量が豊富というだけではもはや対応できない状況になりつつあります。

これからは獲得した知識から何か問題を発見し、その解決方法を見出したり、多数の知識から新たな価値を創造するなど、知識や情報を活用する力が求めれます。

また、社会のグローバル化、価値観の多様化により、企業や社会ではさまざまな人種、考え方や価値観が異なる人々と協働することが求められています。

そのような環境にスムーズに適応できるようにするためにも、学校教育の段階において多様な他者と協働できる力を伸ばしていくことは大切であると思われます。

さらに、人工知能(AI)の進化により、近い将来、いまある多くの仕事は失われる見通しであるといわれています。

 

そのような困難な状況にも柔軟に対応できる、自らの能力をさらに伸ばしていこうとする力、新たな価値を創出していくことができる力等の育成が、アクティブラーニングを通して推し進められているといえます。

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アクティブラーニングをどのように導入していくか

実際、アクティブラーニングをどの程度実施していけば良いかという点については、悩みが多い部分ではないでしょうか。

知識を有効に活用していくためには、まず、知識そのものを持っている必要があるため、従来の知識詰込式の授業そのものを否定する必要はないと思われます。

従来の授業形態とアクティブラーニングを、いかにバランスよく実施していくことができるかが肝要ではないでしょうか。

 

現在の授業をすべてアクティブラーニングに無理に移行させていく必要はないのでは、といったところです。

私自身のケースを紹介させていただくと、毎回90分間の授業の序盤は知識や情報を一方向で伝える従来の講義形式で実施し、それ以降は、序盤で提示した知識等をもとにアクティブラーニング形式で実施するといった感じです。

具体的な時間配分で示すと以下のような形になります。

  • 序盤30分間 従来の授業形式(テーマに関する知識・情報の提示)
  • 中盤45分間 アクティブラーニング形式(グループワーク、グループディスカッション等)
  • 終盤15分間 ディスカッション結果の全体共有とまとめ

 

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アクティブラーニングで求められるファシリテーション能力

アクティブラーニングを実施するといっても、それは子どもたちをうまく誘導する、クラス全体を適切にマネジメントすることができる教師がいることではじめて成立するものといえます。

ここでは、アクティブラーニングを担当する教師(ファシリテーター)に求められる対応について述べていきます。

 

求められる対応1 : 授業進行のシミュレーション

アクティブラーニングではグループワークが多用されると思われますが、その際、グループ分けやグループでの活動、活動の成果を発表など、学習者自身が動く場面が多く見られます。

それらは教師のペースとは異なるものであるため、そのままにしておくと授業時間が足りなくなってしまうおそれがあります。

そのため、教師は事前にシミュレーションを繰り返し、授業内の各セッションの時間配分の目安を予め決めておくことが望ましいでしょう。

時間配分をオーバーしてしまうようであれば、半強制的にその活動をソフトに打ち切り、次のセッションへと移行していく等の対応が必要と思われます。

 

求められる対応2 : 発表に不慣れな学習者への配慮

アクティブラーニングとしてグループワークを行った場合、各グループからその活動の成果を全体に向けて発表してもらうことになります。

その際、人前で話すことに慣れていない学習者が発表の担当になる可能性があります。その場合の配慮して、グループ内の役割分担への工夫が挙げられます。

具体的には、発表者という役割に加え、発表者補佐等という役割も設けておくといった感じです。

役割分担についてさらにいえば、なるべく多くのメンバーに明確な役割を割り振ることで、グループへの所属意識を高めながら、より主体的な授業参加を促すことができる可能性があります。

リーダー、リーダー補佐、記録係り、雰囲気づくり係り、発表者、発表者補佐等、役割がその人物の意識を変えていくともいわれますので、可能であればメンバー全員に何らかの役割がある形が望ましいと思われます。

教師側のこのような配慮は、発表者を一人にしないといったグループ内の意識を高めることにつながるのではないでしょうか。

 

求められる対応3 : 教師からの考えをモデルとして提示する

あるテーマについてグループディスカッションを行った場合、最終的にどのような結果にまとまるかは、正直、予測が難しい面もあると思います。

アクティブラーニングでは、正解がないテーマについてディスカッションする場合があります。ですが、明確な正解がないということで、学習者側の考えが望ましくない方向でまとまってしまうケースもあるかもしれません。

その場合は、教師は即座に介入をする必要があるといえます。その際の介入としては、あくまでも考え方の一例として、教師が用意したアイディアを提示するといった形です。

 

アクティブラーニングであれば、どのような方向に考えがまとまっても良いというわけではないと思います。多様な解の存在を認めつつも、必要に応じて教師は解のあり方にかかわっていくべきではないでしょうか。

このようにアクティブラーニングの成果には、どのような学習法を採用するかに加え、担当する教師のファシリテーション能力も大きく影響を及ぼしているということができるでしょう。

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まとめ

子どもたちの自ら学ぶ姿勢の形成に重点を置いた授業は、アクティブラーニングが推進される以前から、教育現場では実施されていたと思われます。

その教育の形を決めているのは、学習において何を最も重視するのかといった教師自身の価値観ではないでしょうか。いまは教育界、社会全体の価値観として、子どもたちの能動的学修が重視されています。

さらにいえば、子どもたちに限らず私たち大人も、社会の変化に柔軟に対応できる力をさらに高めていくために、このアクティブラーニングを自ら実践していくことが求められているのではないでしょうか。

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