大学生活最後の課題にして、最大の難関でもある卒業研究。「できるものならやりたくない」「早く終わらして卒業旅行を楽しみたい!」等というのが、もしこれからあなたが卒業研究に取り組む立場なら本音ではないでしょうか。
最近では卒業研究が必須ではない大学もあるようですが、個人的には一生に一度しかない卒業研究にしっかりと取り組み、そこから得られる効果を最大限に享受するべきではないかと考えています。
卒業研究から得られる成果とは何か?それはこのサイトのタイトルにあるライフスキル(生きる力)の獲得です。
ここでは卒業研究への取り組みがいかにライフスキルの強化へとつながっていくのかを、その時の学生たちの様子を10年近く間近で見てきた経験をもとに述べていきたいと思います。
そもそも「卒業研究」とは?
大学のケースでいうと、一般的に3年次から研究室(ゼミ)に所属し、研究テーマを決め、そこでの指導教員から助言・アドバイスを受けながら主体的に研究に取り組み、その成果を卒業論文としてまとめるものが卒業研究となります。
研究室によっては先輩の研究の引き継いだり、予めテーマの候補が用意されているケースもあるかもしれませんが、基本的には学生自らの興味・関心に沿ってテーマを決めていくことになると思います。
また、研究の成果を体系的に論文にまとめるだけではなく、その内容を一般向けに分かりやすく提示するプレゼン資料としてもまとめ直し、最後の発表会の場にて披露するまでを含みます。
このように卒業研究においては、特に4年生の後半の期間は、持てる能力をフル稼働させながら課題に取り組むことになります。
この自らの能力をフル稼働させる過程において、さまざまなライフスキルが訓練・練習され、スキルアップにつながることが期待されるのです。
卒業研究を通して強化が期待されるライフスキルとは?
以下では順に、卒業研究に主体的に取り組む中でスキルアップ・強化が期待される主なライフスキルについて見ていきたいと思います。
自ら考える力
まず、この思考力はテーマ決めの段階から鍛えられます。自分の興味・関心は何か?どんな研究に取り組みたいのか?すぐにテーマが決まる場合もあれば、なかなか方向が定まらないこともあるでしょう。
テーマを決める段階で多くの時間がかかっても、それは決して無駄ではなく、明確な解が用意されていない状況の中で、最適と思われる解を導き出すことができる力の訓練・練習につながっているはずです。
基本的な考え方として、どのようなスキルであってもスキルアップのためには、それ自体の訓練・練習を地道に繰り返していく必要があります。
なかなか解が見つからないとしても、自分自身でいろいろと考えてみるという時間は、考える力を強化していくためには絶対に必要であるといえます。
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目標を設定するスキル
卒業研究は期限が明確に決められています。そこから逆算することで(逆算思考)、いついつまでに何をすべきかを考え、段階的な目標を設定していくことができます。
当然、予定どおり作業が進まないこともあると思いますので、その場合は目標を修正し直していく必要があるでしょう。
それらの作業の繰り返しは、最終目標の達成に向けて段階的な目標を設定したり、直近の目標をより明確に定める等のスキルの総体である、目標を設定するスキルの獲得につながっていくことが期待されます。
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最善の努力
卒業研究は途中で諦めてしまうと、最悪の場合、卒業することができません。就職先が内定していようと、その事実は変わらないのではないでしょうか。
見方をプラスに変えてみれば、自分自身を効果的に成長させることができる、これ以上のプレッシャーはないのではと思います。
そのような環境下では、何がなんでも期限までに形にしようと必死に努力する姿勢が見られます。また、大抵の場合、努力を通じて卒業論文は無事に形にすることができるはずです。
その結果として、諦めずに努力することの大切さを実感できるとともに、自分も頑張れば一定の成果を出すことができるという自信を得られるはずです。
これらの経験は、自らの課題に対して最善の努力を発揮しようという姿勢につながることが期待されます。
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コミュニケーションスキル
他者との円滑な人間関係を形成し、維持し、そして発展させるために必要な能力であるコミュニケーションスキル。学生にとっては卒業後、社会人としてその重要性がますます高まってくるものといえます。
このコミュニケーションスキルも、卒業研究に取り組む中で特に強化される能力です。そのタイミングはいつか、それは最後のプレゼン発表にかけてとなります。
コミュニケーションスキルは、情報を相手に伝えるスキルと、情報を相手から受け取るスキルに大別されるといわれます。
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プレゼン発表のプロセスにおいて鍛えられるのは、主に前者のスキルになるといえるでしょう。情報を伝えるスキルは、上記の関連サイトによると以下の構成になるといわれます。
・言語的スキル → 話の内容/使う言葉
・非言語的スキル → ジェスチャー/表情/声の調子
そして、これらのスキルの大半は、プレゼン資料の作成や繰り返し行う発表練習、発表本番を通して強化されていくことが期待されるでしょう。
事実、学生たちはプレゼン資料の作成や発表練習を通じて、限られた時間の中で何を伝えるのか、どのような順序で伝えるのか、どのような言葉で伝えるのかを試行錯誤しながら整えていきます。
そして、発表会当日には、見違えるほど伝えるスキルが上達した姿を見せてくれることでしょう。
ここで改めて、卒業研究を通して獲得される可能性があるライフスキルを一覧にすると、以下の内容になります。
- 自ら考える力
- 目標を設定するスキル
- 最善の努力
- コミュニケーションスキル(伝えるスキル)
これらのスキルのうち、特に上の3つはその人が専門とする分野でのパフォーマンスの発揮と密接に関連することが、これまで研究結果から示されています。
すなわち、考える力や目標を設定するスキル、最善の努力というスキルを高いレベルで身につけている人は、その後、それぞれの立場において優れたパフォーマンスを発揮できる可能性があるということです。
このことから、卒業研究は大学を卒業するための一要件という位置づけを越えて、今後の充実した人生の実現を促す能力を手に入れる、絶好の機会であるといっても過言ではないのではないでしょうか。
ライフスキルの獲得をさらに促す要因
次に、これらライフスキルの獲得をさらに促進する環境的な要因について触れておきます。それは同じ研究室に所属するメンバーの存在です。
研究テーマは一人ひとり異なっていたとしても、卒業研究を完結させるという共通の目標のもと、互いに進捗状況を確認したり、情報交換をしたり、互いに刺激を与え合いながら切磋琢磨していくことができます。
そのようなメンバーの存在は、なかなか成果が出ない時の精神的な支えになったり、研究への動機づけを喚起させたり、維持させる上で重要な役割を果たしているといえるでしょう。
もし、あなたがこれから卒業研究に取り組まれるのであれば、是非、このことを意識しておいていただければと思います。
まとめ
卒業研究を開始したばかりの頃は、やりたくないこととして消極的な姿勢が見られても、それはそれで仕方がないと思います。
ですが、少しずつ分かることやできることが増えていくと、気がついた時には消極的な姿勢は消え失せ、主体的に取り組む姿勢が前面に出てきていることでしょう。
「4年生になって、はじめて大学生をしている感じがする」といった感想を、毎年のように卒業研究に取り組む学生から聞くことができます。
卒業研究の機会を活かすも逃すのも本人次第ですが、それとともに、彼・彼女らを導いていく指導教員の役割も非常に重要であるといえるのではないでしょうか。
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