『やりたいことが見つからない…』とは、主に就活を控えた多くの大学生に見られる悩みですね。このような悩みが生じる背景を探ると、実に多くの理由が見えてきます。
この記事では、『これが自分のやりたいこと!』という明確な意思決定を困難とする7つの理由について解説をしていきます。
また、記事後半におけるやりたいことを見つけるための3つの視点もぜひチェックしてみてください!
やりたいことが見つからない理由
早速、やりたいことが見つからない7つの理由についてみていきましょう。
理由1 : 考える時間が少なすぎる
私たちは社会人として自立することを目標に、小学校から高校、さらには大学まで教育を受けてきています。
つまりやりたいこととは、一人前の社会人として自立した姿を自ら実感したり、世間に示していくためのものではないでしょうか。
そのような重要な選択または決断をするわけですから、誰もが慎重になるはずですし、納得のいく答えを導き出すためには、当然多くの時間が必要になります。
といっても、大学生活では勉強に部活(サークル)、交友関係にバイト、ボランティア活動等と盛りだくさんです。
その過密スケジュールの中でさらに「自己理解」を深めながら、卒業後のキャリアのあり方について多くの時間を割くことができる人は少ないのではないでしょうか。
理想をいえば、一人ひとりが自分のペースで、納得のいく答えを導き出していけることが望ましいですが、現状はそうではなく、答えを急かされているようにも感じられます。
◆ 大学生活と自己理解についての「関連記事」はこちら
理由2 : 「人生において…」とハードルが高すぎる
やりたいことを決めていく際、『これからの人生においてやりたいことは?』ととらえていくと、意思決定のハードルが高くなりすぎないでしょうか。
人生100年時代と呼ばれるように、今後は一人ひとりが働く期間はより長くなることが予想されます。定年退職のタイミングは伸び、「生涯現役」というケースももっと増えてくるかもしれません。
そんな時代の中にあって、ある一つの会社に定年まで勤め上げるというケースはこれからどんどん減っていく可能性があります。
自身のキャリア形成により積極的な人は、転職を繰り返しながらさらなるキャリアアップを図っていくことになると思います。
なので、『人生においてやりたいことは?』というよりも、『キャリア形成の起点としてまずやってみたいことは?』という意識で向き合うと、スムーズに道が開けていくかもしれません。
理由3 : 正解と呼べるモデルがわかりづらい
日本では従来からの終身雇用制度の是非について議論が見られるなど、将来への不安の少ない、安定した生活を送るための正解と呼べるモデルがわかりづらくなってきています。
大企業に正社員として就職すれば、本当に定年まで安泰なのでしょうか。いまは数年先の状況までも予測が難しい時代です。
小学校から大学まで本業であった勉強では、必ずといっていいほど正解が与えられてきました。ある意味、正解を与えられることにすっかり慣れてしまっているともいえます。
ですが、会社・仕事選びでは自分なりの正解を導き出していく必要があります。また、苦労して1つの解を導き出したとしても、それが本当に正解であるかはわかりません。
そこにあるのは自分自身の納得感だけです。あなたがその選択に激しく同意することができるのなら、それは当面の間は「正解」と呼べるものではないでしょうか。
なお、正解を与えられることにすっかり慣れてしまっている人は、個々の物事に対して「あまり深く考えない」「あまり疑問に思わない」という思考習慣が強化されている可能性があります。
そのような思考習慣について詳しく知りたい方は、以下の「関連記事」もぜひご覧になってみてください。
理由4 : 選択肢が多すぎる
『やりたいことはなんだろう』と悩むことは、形だけを見れば『今夜、自分が食べたいものはなんだろう』と悩んでいることと同じです。
当然のことながら、そのままでは選択肢が非常に多くなってしまうので、食べたいのは和食か洋食か、それとも中華かというように、カテゴリーを絞っていくと比較的決断がしやすくなります。
つまり、『やりたいことは何?』と延々と悩んでしまう原因は、自分なりの会社選びや仕事選びの基準が明確に定められていない点にある可能性があります。
参考までにお伝えすると、2011年の時点で日本には17,000以上の仕事があるとされています。その中からやりたい仕事を短期間のうちに探すなんて、とても現実的ではありません。
自分なりの会社・仕事選びの基準そのものは「就活の軸」とも呼ばれています。そのような軸が自分の中に無いと、仮に意思決定ができたとしても、またすぐにブレてしまいそうですね。
◆―関連情報―◆ 第4回改訂厚生労働省編職業分類 職業名索引――労働政策研究・研修機構
理由5 : 自己理解が深まっていない
自分への理解である自己理解を深める必要性は、理由4で言及した自分なりの会社・仕事選びの基準を明確にする必要性からも感じられると思います。
あなたなりの基準なので、当然ながらあなただけにしか分かりません。自分が希望する職種や働き方、待遇、やりがい等を一つひとつ明確にしながら、理想の相手(企業)に効果的にアプローチすることができるといいですね。
◆ 難解なイメージのある自己理解の意味と必要性をスッキリと理解したい方は、以下の「関連記事」もよかったら参考にしてください。
理由6 : 実はまだ就職したくないと思っている
小学校から高校または大学まで、進級・進学のペースはほぼ全員が同じタイミングであるといえます。
そして次に、いよいよ自立した社会人に向けて就活を行うことになるわけですが、果たしてこれも全員が同じタイミングで良いのでしょうか?
「学ぶ」から「稼ぐ」へと形態が大きく変わるわけですから、もう少し準備をしてから次のステージに進んでいきたいと感じる人もいるかもしれません。
実はこの記事を書いている私自身がそのようなケースでした。私の場合、会社に入ってそこの上司の元で懸命に働くというイメージが全く持てていませんでした。
どちらかというと「○○研究所」というところに入り、一人で黙々と一つのことに取り組んでいくという姿が向いていると感じていました。
そのような自らが望む働き方を実現するべく、奨学金を借りながら大学院に進学し、かなり時間はかかってしまいましたが、現在の大学教員という立場に至ることができています。
もしあなたが大学卒業後すぐに社会人になることに一定の抵抗があるなら、本音のところでは、『就職のタイミングはまだ先でいいかな。。』と感じているのかもしれません。
落ち着く時間があれば、ぜひ自分のこころの声(本音)に耳を傾けてみてください。
理由7 : やりたいことを諦めてしまっている
人によっては、経済的、環境的な制約等から、本当にやりたいと思っていることに蓋をしてしまっている人もいるのではないでしょうか。
本当にやりたいことを諦め、その想いを上書きするために別のやりたいことを無理に見つけようとしていませんか。
いますぐにそのやりたいことの実現が難しくても、これからの長い人生の中で、そのやりたいことに徐々に近づいていくことはできるはずです!
『これこれはできない』といった外部からの評価を100%信用する必要はないと思います。なぜなら、その評価はあなた自身でしっかりと検証されたものではないからです。
『やりたいことはできない』といくら思い込んでも、あなたの本心は代わりのやりたいこと探しを妨害し、いつまでもやりたいことが見つからないという事態を招く可能性があります。
やりたいことを諦めるのではなく、その気持ちに蓋をすることを諦めましょう!
やりたいことを見つけるために必要な視点
次に、やりたいことをみつけるという難易度の高い意思決定を着実に進めていくための3つの視点について述べていきます。
その1 : キャリアの起点としてまずやってみたいことは何か
新卒採用の段階で決めるやりたいこととは、いわばこれから始まるキャリア形成の起点となるものです。
非常に長い目でみれば、そこを出発点として右肩上がりに徐々にキャリアを発達させていければ良いことだと思います。
そのようにとらえれば、『人生においてやりたいことは?』よりも、『自らのキャリアの起点としてまずやってみたいことは?』という意識で向き合うことになりますね。
もっといえば、人生においてやりたいこととは、これから始まるキャリア全体を通して達成できれば良いことという位置づけになると思いませんか?
繰り返しますが、いまは人生100年時代です。キャリアについても長期的な視点を持つことが求められていると思います。
その2 : いまの能力・スキルでできそうなことは何か
自身のキャリアを発達させていくためには、その時々に与えられた課題を確実にクリアしていくことが求められます。
そういう意味では、やりたいことは能力的に対応可能な範囲で検討を行っていく必要があるといえます。
つまり、いま身につけている能力やスキルのレベルで、努力すればきちんと結果を出すことができる課題や働き方とは何かを意識していくということです。
もちろん、能力やスキルは多様な経験や自己研さんを通して日々磨かれていくものですので、あくまでもいま現在の能力レベルで検討を行うということです。
私自身も大学教員としてのキャリアをスタートさせようとしていたとき、有名国立大学や大手私大の教員を希望していました。
ですが、授業実践の経験も研究活動のスキルも、学生に対応する能力もまだまだ全然でしたので、仮にそのような大学の教員になれたとしても、きっと長続きはしなかったのではと思います。
これから長期的にキャリアを発達させていくためには、結果や成果といった実績を着実に積み重ねていく必要があります。
要求される個々の課題に対処・対応できない状態がつづいてしまっては、精神的なストレスも溜まり、最終的にドロップアウトしてしまう可能性が高まります。
そのような事態を防ぐためにも、能力的な「現在地」を可能な限り正確に認識し、その範囲内でやっていける会社や仕事を意識していく必要がありますね。
その3 : 多様なコミュニケーションへの準備はできているか
人間関係そのものは、多様な考え方や価値観に触れて刺激を受けたり、ライバルと切磋琢磨したりと、私たちの成長にプラスの影響を及ぼしてくれるものです。
ですが、何らかの理由でその関係がこじれてしまうと、それはストレスの原因であるストレッサーとなり、精神的に辛い状態を作り出してしまいます。
特に、会社・職場での人間関係がストレッサーとなってしまうと、常に顔を合わせなくてはならないので、負担感はより強いものになるでしょう。
人間関係を良好にすることは、仕事で結果を出すことよりも基本的なことであり、かつ極めて重要なことであるといえます。
あなたは自分のコミュニケーション能力に自信がありますか?また、対人場面や集団内において、自分がどのように振る舞う傾向にあるのか認識できていますか?
会社・職場での人間関係は、大学での学生同士のコミュニケーションとは質的に大きく異なります。考え方や価値観、年代等、さまざまなものが異なる人物との多様な人間関係に日々対応していくことが求められます。
そのような前提があることを認識した上で、自らのコミュニケーション能力も勘案しながら、希望する会社・仕事を選択していく必要がありますね。
◆ コミュ力を高めたい、性格とコミュニケーションとの関係について詳しく知りたい方は、以下の「関連記事」もぜひ参考にしてみてください。
スポーツ選手はもともとスポーツがやりたいことだった?
ここで、スポーツ選手を例にやりたいことを見つける過程について説明したいと思います。
ここで想定するスポーツ選手とは、幼稚園や小学校低学年頃から習い事などでスポーツをはじめた個人とします。
現在、私はスポーツ系の学部に所属しており、周りには小さい頃からスポーツをはじめ、現在まで継続してきている学生が多く見られます。
そんな彼・彼女らに対して、機会があれば以下のような質問をしています。
スポーツをはじめた理由は何ですか??
『え?』と一瞬、戸惑いの様子を見せ、その後『なんでだろう?』『あまり考えたことなかった』という返事をします。
よくよく確認してもらうと、以下のようなケースに該当する場合が多い印象です。
- 親に勧められたから
- 兄弟姉妹がやっていたから
- 友だちがやっていたから など
つまり、『スポーツがやりたい!』といった積極的な理由でスポーツを始めたケースが大半ではないということです。
ではなぜ、そのような理由で始めたスポーツが、いま、彼・彼女らにとって第一にやりことこと・好きなことになっているのでしょうか。
それはそのスポーツにおいて、何らかの結果や成果を出すことができてきたからだと思います。
最初はほんの小さな成果だったと思いますが、それは『もっとほめられたい』『もっと上手になりたい』『もっと上を目指したい!』といったさらなる成長への欲求に火をつけることになったはずです。
その成長のサイクルの結果が、いまの立派なスポーツ選手としての姿ではないでしょうか。
ここからいえることは、やりたいことの入り口はある程度方向性が合っていれば(もともとの好き嫌いなど)、極端な話どのようなことでもOKで、大事なのはそのことで『できた!』という結果や成果を出すことができるかという点です。
何も成果を出せないことは、誰だってそれ以上つづけたいとは思わないですよね。大事なのは周りのサポートを得ながら、本人も頑張ることでまずは1つ結果を出すことです。
その小さなプロセスが、本当にやりたいことを見出していく上で、実はとても大切になってくると思います。
最初の結果・成果を出すために必要なチカラ
成長への起点となる最初の結果・成果を出すためには、監督・コーチからの適切な指導に加え、家族等周囲からのサポートも大切になると思いますが、ここでは本人自身が有するチカラに着目します。
私自身は、特に以下の4つが重要な役割を果たしていると考えています。
- 適切な目標を設定できる力
- 途中で諦めず、努力しつづけられる力
- 失敗等の負の事態を挽回していける力
- 自分自身で物事を考えられる力
また、学術的にも、これら4つの力は密接に関連しあいながら、スポーツ選手の優れたパフォーマンスの発揮を促すことが示されています。
さらにいえば、これらの力はスポーツの場面に限らず、さまざまな人間活動の場にも適用可能な一般的なものであるといえます。
つまり、見方を変えていえば、既にこれらの力を十分に有している人は、新しくはじめたことにおいても確実に結果を出し、成果を挙げていくことができる可能性が高いということです。
まさに、「やりたいことを手に入れられる力」といえるのではないでしょうか。
もちろんこれら4つのチカラは、一度限りではなく、継続的に結果や成果を出していくことに貢献してくれるはずです。
◆ ここで紹介した4つの力に興味・関心のある方は、以下の「関連記事」もぜひご覧になってみてくださいね。
・ 適切な目標を設定できる力
・ 途中で諦めず、努力しつづけられる力
・ 失敗等の負の事態を挽回していける力
・ 自分自身で物事を考えられる力
やりたいことを見つける?それとも…
やりたいことというのは、生業としてやりたいこととも言い換えることができます。現在、生業を持っている方々は、みんながみんな、それを一生懸命見つけてきたのでしょうか?
中には苦労して見つけられた方もいると思いますが、それとは別に、何らかの縁があってはじめたことを、最終的に生業として受け入れていったというプロセスもあるのではないかと思います。
どんなことでも、一定期間継続して取り組むことで少しずつ成果が出るようになれば、『もっと成果を出したい』『もっと成長したい』といった欲求がわいてきます。
そして、そのような成長欲求が喚起されている状態に、この仕事を行うことで社会にこんな貢献ができているという価値観がプラスされることで、それを徐々に正式な生業として受け入れていくことができるという流れです。
ある意味、社会での自分の存在意義を強く実感できることがやりたいことの正体、といっても過言ではないかもしれません。
やりたいことを探すという作業は、場合によってはエンドレスなものになってしまう可能性があります。
例えば、パートナー探しであっても、『もっと自分に合ういい人がいないか』とこだわり続ければ、極端な話、いつまでも見つからないといった事態にもなってしまいます。
やりたいことを見つけるためには、目の前のことをやりたいこととして受け入れていくというプロセスも、ひとつ考慮に入れておく必要があると思います。
まとめ
この記事を書いている私は、人生においてやりたいことがあると自信を持っていえます。ですが、それは大学生の頃はほとんど明確にはなっていませんでした。
大学教員というキャリアをスタートさせ、さまざまな学生たちと出会い、一定数の研究成果を発表し、多くのフィードバックをもらう中で徐々に明確になっていきました。
どうしてもやりたいことが見つからない場合は、キャリア形成の起点としてまずはやってみたいこと、という視点で会社・仕事選びをしてみてください。
そして、そこでの実績を土台として焦らず自分のペースでステップアップしていきましょう!そうすれば徐々に見える景色が変わってくるとともに、それらの中に人生をかけて到達してみたい魅力的な頂が表れるかもしれません。
そしてそれは、紛れもなくあなたが本当にやりたいことになっていくはずです!
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