まず前提として、この記事は一人ひとりの『成長』を促したり、導いたりする立場にある方に向けて書かれているものとなります。
また、その成長の部分を具体的にいえば、個人の主体性を育てるという点に着目しています。
主体性とは、自分の意志や判断で行動しようとする態度であるといわれ、新たな教育の形である『主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)』においても重視されている学習者の姿です。
この記事では主体性を育てるための一人ひとりへの働きかけ、すなわち、望ましいコーチングのあり方について書かれています。
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主体性を育てるコーチングスキルとは
望ましいコーチングを提供していく上で必要となる『コーチングスキル』とは、本質的にはコミュニケーションスキル(能力)であるといわれます。
つまり、教師や指導者(コーチ)、会社の上司という立場にある方は、学習者(部下)と密にコミュニケーションを取りながら、その人物の主体性を育てていく形となります。
このコーチングスキルを高めていくためには、自身のコミュニケーションスキルの向上も目指していく必要があるということができます。
言い方を変えれば、既にコミュニケーションスキルに自信がある方は、より望ましい形でコーチングスキルも発揮していくことができる可能性があるということです。
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主体性を育てるメリット
次に、一人ひとりの主体性を育てるメリットについて述べていきたいと思います。
メリット1 : 生産性が向上する
繰り返しになりますが、私たちは主体性を高めることで、誰かから指示を受けなくても、自ら考え、判断し、行動していくことができるようになります。
結果として、あなたは指示を出すこと以外に時間と労力を費やせるようになります。
また、主体性のある人物はいわれたこと以外にも取り組んでくれる傾向があるため、チーム全体としての生産性は確実に高まっていくと考えられます。
メリット2 : 不平不満が減る
人は誰しもやらされ感がある作業や仕事に対しては、不満や文句がつい口から出てしまうものと思われます。
言い換えれば、主体性を身につけた人物が集まったところでは、そのような不平不満はほとんど見られず、雰囲気の良い、作業に適した環境づくりが行われているといえるのではないでしょうか。
メリット3 : 人間関係上のトラブルが減る
これは特に学習者と指導者側とのトラブルが減少するという意味となります。
学習者に主体性が十分に身についていない場合、繰り返しになりますが、指導者側からの指示や指摘に対する不満や文句が出てきやすいということがあります。
それがエスカレートしてしまうと、パワハラ等のハラスメント案件として、第三者に扱われてしまうことになるのではないでしょうか。
それは学習者と指導者側、さらには組織全体にとってもプラスになることではありませんので、主体性の向上を促しつつ、回避していくべきものではないでしょうか。
メリット4 : 学習者から刺激を受けられる
個々人が自ら考え、判断し、行動できるようになってくると、一人ひとりが持っている『能力』や『強み』が徐々に発揮され、指導者側が『お、これは!』と感じるアイディアが出てくることがあります。
基本的に、指導者側は学習者へ知識を与える側ですが、形だけを見れば、時として学習者側から学ぶことがあるということです。
これは私自身の経験からいえることですが、授業でグループディスカッションを行ってもらっていると、主体的に行動できている学生からは、時に秀逸なアイディアが出されることがあります。
ただ、その際、学生側からも学ぼうといった姿勢が教員側に見られない場合は、そのような優れたアイディアをキャッチすることは難しくなってしまうのではないでしょうか。
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主体性を育てる方法
ではいよいよ、一人ひとりの主体性を育てることにつながる、コーチングのあり方について述べていきたいと思います。
方法1 : 信頼関係を構築する
一人ひとりの学習者に、指導者側からの助言やアドバイスを受け入れてもらい、それを試してもらうためには、やはり両者の間に信頼関係が構築されている必要があるといえます。
また、そのような関係性は短期間で構築できるものではありませんので、焦らずじっくりと、一人ひとりと真摯に向き合いながら進めていく必要があると思われます。
下記の関連記事の中で書かせていただいていますが、信頼関係を構築する方法は多岐にわたるといえます。
そのため、学習者との関係性の中で指導者が意識すべきポイントや場面は、同じく多岐にわたるということです。
学習者との1日1日を真摯に積み重ねていった先に、信頼関係の構築があるのではないでしょうか。
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方法2 : 傾聴する
これはコーチングそのものの中核的要素といっても過言ではないかもしれません。
相手の話を聴く際、どのような考え・価値観を持っているのか、どのような性格であるのか、どのような生活スタイルであるのか、どのような悩みを抱えているのか等に話を聞き出していきます。
すると、学習者本人は自らの話の内容を耳から聞いて、改めて自分という存在について理解を深めていくことができます。結果として、自分自身に対する理解である『自己理解』を深めていくことができます。
自己理解を深めるとは、言い換えれば、自らの取り扱い説明書を作成する作業ともいえます。
そのような世界でただ一つの説明書が手元にあることで、自分というものを主人公にして行動していけるようになると思われます。
方法3 : 質問する
このスキルは先の傾聴すると合わせて用いることで、その人物に関する情報をさらに得ることができます。
ただ、ここで求められるのは、より話を発展させられる、より考えを深めることができる質問を繰り出すことができるかという点ではないでしょうか。
私の場合、質問の内容に困った時は、当初の目的や希望等といった学習者側における原点を確認する問いかけを行うようにしています。
そうすることで、話が本題からズレてしまっていた場合は軌道修正され、必要な話題について限られた時間を有効に使うことができるようになります。
方法4 : 褒める
4つ目の方法である褒めるは、学習者本人を強力に動機づけるものとなります。また、以下の4つのポイントを抑えておくことで、動機づけへの効果はさらに高まることが期待されます。
ポイント1 : 具体的に褒める
学習者のどの行動がどのように良かったのかについて、可能な限り具体的に伝えていくようにします。
表面的でいい加減な褒め言葉は、学習者との関係をかえって悪化させてしまうおそれがあります。
ポイント2 : タイミング良く褒める
タイミングとしては、例えば、良い行いがなされたその時に褒めてあげる必要があります。
行いと褒めるタイミングとのタイムラグが大きくなればなるほど、動機づけへの効果は薄まってしまうでしょう。
ポイント3 : 全体の前で褒める
可能であれば、関係する全員の前で褒めてあげるようにします。後述する『注意を与える』とはシチュエーションが全く異なります。
褒めるとう行為は、本人に限らず、チーム全体にも良い影響を及ぼしますので、積極的に全体に対して公表する形で実施することが望ましいでしょう。
ポイント4 : 褒め過ぎない
何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しで、過度な褒め言葉は、それが持つ本来の効果を低下させてしまう可能性があります。
また、過度は評価は、学習者における自信過剰を招いてしまうおそれがあるので注意が必要です。
方法5 : すぐに答えを与えない
従来の学校教育は与える教育であるといわれます。さまざまな知識(指示)を与え、それを吸収してもらうことは大切ですが、与えるばかりであると、学習者側は指示待ち症候群となってしまいます。
主体性を育てていくためには、まず、学習者側で自力で考えてもらうようにします。そこで、自分たちでこちら側が用意した解に到達できたならば、それは学習者の自信につながることになります。
指導者側が主導権を持つ与える教育は非常に進めやすいものとなりますが、それは見方によっては、学習側が成長できる機会を奪ってしまっているともいえるのではないでしょうか。
なお、これからの時代は価値観の多様化により、物事の正解・不正解の区別がつきにくくなるといわれています。
指導者側が提示する答えは、多様な『解』の一つの形として学習者に提示していくことが望ましいといえるかもしれません。
方法6 : 相手の考えを否定しない
学習者は、あくまでも多様な物事について学習を行っている段階ですので、指導者側が期待する考えを提出物等の中で示さない可能性があります。
ですが、そこでその考えを否定してしまうと、自分自身で考えることへの意欲を削いでしまう可能性があるといえます。
個人の主体性において、自ら考えるというのは非常に重要な位置を占めていると思われます。
その自ら考える力を促していくためには、学習者から出される多様な考えを受け止められる、こころに広さが必要ではないでしょうか。
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方法7 : 注意する時は個別に伝える
学習者に対して何か指摘事項がある時に、それを全体ではなく個別に伝えるというものです。
これは学習者への配慮の一つであり、指導者側のこのような配慮は、学習者との信頼関係構築の面で寄与する可能性があるでしょう。
ただ、全体に対しても周知する必要性があるような場合は、全体への周知をメインとしつつ、本人への指摘はソフトに伝えるのが望ましいと思われます。
方法8 : 一人ひとりに役割を与える
人間は何か役割を与えられると、それを果たす形で行動するようになるといわれます。
そのような役割行動を、学習者の主体性を促す要因の一つとして積極的に活用していこうというものです。
また、『○○係』というように、所属するチーム運営上の役割であると、チームへの帰属意識も高めることができると思われます。
そうすることで、『チームに貢献していこう』という意欲が高まり、結果として、主体性の向上を効果的に促していくことができるのではないでしょうか。
方法9 : タイミングを待つ
学習者に対して、指導者がいかに懸命に働きかけを行ったとしても、極端な話、学習者の電源がオンになっていなければ、ほとんど意味はなさないということになってしまいます。
そこで必要となってくるのが、電源がオンになるのを待つということです。
社会人の場合は、そのような時間はないかもしれませんが、実際問題として、電源が入っていない状態でのアプローチは、指導者側の時間と労力の浪費に終わってしまう可能性があります。
ですが、その後、学習者はさまざまな経験をしたり、周囲の状況が変化していく中で、電源がオンになるタイミングが必ずやってくると思われます。
そのタイミングを逃さずにいっきに働きかけることで、主体性の向上を効果的に促していくことができます。ベストなタイミングを逃さないためには、その学習者を観察しておく必要があります。
つまり、電源がオンになっていないからといって何も働きかけを行わないのではなく、より注意深く観察しつづけるということです。
私も、大学生の頃は電源がオフの期間がありました。私の場合は、指導教員の一喝により電源がオンになりましたが(笑)
まとめ
指導者側の視点から見た主体性を育てる方法9選、いかがでしたでしょうか。最後に、改めて9つの方法を以下に示しておきたいと思います。
- 信頼関係を構築する
- 傾聴する
- 質問する
- 褒める
- 答えはすぐには与えない
- 相手の考えを否定しない
- 注意する時は個別に伝える
- 一人ひとりに役割を与える
- タイミングを待つ
繰り返しになりますが、一人ひとりの学習者が主体性を高めることで、学習者本人に加え、指導者側にも複数のメリットがあります。
主体性を高められるか否かは、学習者と指導者とのコミュニケーションのあり方にかかっています。まさに、コーチングスキルの本質はコミュニケーションスキルであるということです。
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