人は誰しも自分のペースというものを持っています。そのペースのもとでは、ストレスの影響を最小限に快適に作業を進めていくことができます。
ですが、日々の生活の中でそのペースを維持することは決して簡単ではありません。
この記事では、自分なりのペースである「マイペース」の大切さや、それを維持するために必要なことについて述べていきます。
マイペースとは
マイペースとは自分に合った活動の速度、ストレスを感じず種々の活動を進められる進度のことをいいます(和製英語のため英語圏での使用はNG)。
勉強や仕事などの知的な活動に限らず、走ったり山を登ったりと、身体的な活動にも適用されるものです。
また、『あの人はマイペースな性格』というように、周りのペースに合わせることができない人物の様子として、皮肉を込めて使用されることもあります。
例えば、車の運転であれば、全体の流れの中で比較的遅い車があると、その運転手はマイペースな性格な人との印象を受けるかと思います。といっても、安全運転をされているのでむしろ見習うべきところですが。
なお、この記事ではマイペースそのものを目標達成に向けた自分なりの活動の速度・進度を表す言葉として用いていきます。
マイペースを見出すには自己理解が必要
あなたは自分に合った活動の速度・進度を正確に把握することができていますか。そのようなペースを見い出していく鍵は、ストレスを感じず、快適に作業を進められるか否かという点です。
例えば、ランニングやウォーキングを趣味としている人であれば、多くの人は自分に合った快適な速度、つまりマイペースで行っているはずです。
また、高齢者にも人気な山登りの場合も、ほぼすべての人は自分に合った無理のない速度であるマイペースで山頂を目指しています。
ここでは身体活動を例に挙げましたが、知的な活動においても同様に、自分にとってどの程度のペースがマイペースであるかは、実際に体験を通して自ら感じ取っていく必要があります。
『集中力がつづく時間はどのくらいか?』『休憩時間はどの程度が望ましいか?』『この活動は毎日行えるか?隔日にするか?』等、実際のところ、マイペースはあなただけにしか分かりません。
このようなマイペースを見出していく作業は、自分自身への理解を深める自己理解の一面であるともいえますね。
◆ ここで言及した自己理解に興味・関心のある方は、以下の「関連記事」もぜひご覧になってみてください。一見、難解なイメージがある自己理解を単純明快に解説しています。
マイペースの維持は容易ではない
仕事でも勉強でも、スポーツ等の身体活動においても、快適なマイペースのもとで活動ができればどんなに素晴らしいことでしょう。
ですが、種々の活動にはあなたの周りの関係者の都合も考慮する必要があるため、マイペースですべての物事を進められるわけではありません。
また、以下に示す個人的な理由(要因)からも、マイペースを維持することは難しくなってきます。
ペースを狂わす要因1 : 負けず嫌い
人はどうしても自分と周りとを比較してしまいます。その際、相手が自分よりも優れていると感じた場合、人によってはこころ穏やかな状態でいることが難しくなり、『負けたくない』ともっと頑張ろうと当該活動によりコミットしようとするのではないでしょうか。
このような心理的な作用を負けず嫌いといい、他人に負けることを嫌う勝気な性質ともされています。
負けず嫌い自体は本人の努力する姿勢を形成するものとなるため、肯定的に評価される面もあると思います。
ですが、『誰にも負けたくなーい!』と当該性質が強く作用している場合は、負けず嫌いは本人のペースを乱す要因の1つになっているはずです。
◆ カテゴリー:自己理解
ペースを狂わす要因2 : 完璧思考
やりたいことからやりたくないことまで、毎日の生活の中ではとても多くのやるべきことが存在します。それら無数のやるべきことを、日々完璧にこなしていくことは可能でしょうか。
不器用な私にはとても無理な話ですが、『あれもこれも完璧にしたい』という思いが強い完璧主義の人にとっては、決して無理な話ではないと思います。
ですが、そこでの姿は常にハイペースな様子であり、完璧主義の人は知らず知らずのうちにオーバーワークになってしまっている可能性があります。
◆ カテゴリー:ストレス
ペースを狂わす要因3 : 成果や結果を急ぐ気持ち
いまは風潮として時短・効率化が重視される時代です。『○○の資格を最短◇か月で取得可能!』『初心者でも簡単に○○万円稼げる!』等と、世間ではとても魅力的なキャッチフレーズが飛び交っていますね。
そのようなすぐに成果や結果を出すことが優先され、それが当たり前となっていると、例えば、新しく始めたことでも『早く成果を出したい!』『早く結果を出さなければ』といった心境になってくると思います。
そして、そのような成長を急ごうとする心理は、マイペースにじっくりと物事に取り組みつづけることを難しくしてしまっているといえます。
ハイペースでの活動が長くつづくと体調に悪影響の可能性
実際のところ、多くの人はマイペース以上の速度のもと、勉強に仕事に、その他さまざまな活動に日々取り組んでいます。その様子はハイペースでの活動と表現してもいいかもしれません。
快適に物事に取り組める姿がマイペースならば、ハイペースでの活動は心身の疲労やストレスを徐々に生み出し、それが長期間つづく場合、体調の悪化を招いてしまう可能性があります。
私の例を紹介させていただくと、2020年12月にブログを開設した当初、私は『早く成果や結果を出したい』『早くブログを形にしたい』という一心で、自分としてはかなりのペースで記事を執筆していました。
記事を書くタイミングは本業以外での時間帯となるため、睡眠時間を削って記事を量産していました。数か月にわたりハイペースで執筆をつづけた結果、見事に体調を崩してしまい、その後、不覚にも1週間近く寝込んでしまいました。
早い段階でブログをある程度形にすることはできましたが、結果的に本業にも支障が出てしまいました。それ以降は可能な限りマイペースを維持し、記事の執筆を進めるようにしています。
明らかに自分に合わないペースでの活動は、結果として長続きしない可能性が高いです。どっしりと腰を据えてつづけていく活動であるなら、基本的にマイペースを維持するのがやはりベストであるといえますね。
もう一つ例を挙げると、大学受験をはじめとした入学者選抜のための○○受験も、長期間にわたるハイペースでの活動が余儀なくされるものの1つといえます。
また、苦労して合格を勝ち取った後も、引きつづき新しい環境や人間関係へ適応していくことが求められるため、実際のところ、ハイペースでの活動期間はさらに伸びることになります。
GW明け頃に度々見られる五月病は、このような長期間にわたるハイペースでの活動の結果なのではないでしょうか。
仕事等のケースでマイペースでの活動が難しい場合は、やはり意識的かつ定期的に休養を取っていく必要があると思いますね。
◆ カテゴリー:ストレス
マイペースは確実に目標達成を導く理想の姿
『○○の資格を取得する』『ダイエットや筋トレを成功させる』等、ある程度の時間を必要とする目標の達成を確実に目指すなら、やはりマイペースでの活動を維持するのがベストといえます。
その理由を登山を例に説明します。
山登りにおいては、登山者の一人ひとりが自分のペースであるマイペースを維持して山頂(目標達成)を目指しています。
スタートダッシュを決めたり、途中でペースを変えたりする人はほぼ皆無です。言い換えれば、最初から最後まで、マイペースを維持しているからこそ確実に目標を達成することができているといえます。
反対に焦って歩を進めてしまうと、途中で道を間違ったり、滑って足をくじいてしまったりして、最悪の場合、山頂へのチャレンジを途中で断念せざるを得なくなってしまいます。
確実に目標の達成を目指すなら、マイペースに一歩一歩、着実に歩を進めていくことが望ましいです。またその方が、その時々で冷静な判断も可能となってきますね。
マイペースの維持に必要なこと
繰り返しますが、マイペースを維持することは簡単ではありません。ではなぜ、登山の場合はほぼ全員がマイペースを維持することができるのでしょうか。
途中、別の登山者に抜かされることもありますが、それでも誰一人として慌てることなく、その後もマイペースを維持することができています。
その理由は、登山者の前に存在する道をひたすら辿っていけば、間違いなく山頂へ到達することができる(目標達成できる)という確信を持つことができているからです。
そして、そのような不安の少ない心境にあるからこそ、周りの登山者のペースにも一切影響されることなく、黙々とマイペースに歩を進めていくことができます。
この登山の例からいえることは、事前に目標達成に向けた自分なりの計画づくり(ロードマップの作成)を入念にしておくことが、マイペースを維持するためには極めて重要になるということです。
『目標を達成するために何をしたら良いのかよくわからない!』『このままこの作業をつづけて大丈夫かな?』といった心境が、マイペースの維持を難しくする一番の原因である可能性があります。
マイペースの維持に必要な目標達成への計画づくり
目標達成への計画づくりである、ロードマップの作成は決して容易な作業ではありません。なぜなら、目標達成に必要な多数の課題を抽出するとともに、それらを時系列的に位置づけていく必要があるからです。
ですが、そのような難解な作業を効率よく進められる便利なツールがあります。それは大谷翔平選手の活躍によって注目されている「マンダラチャート」という目標達成シートです。
これは3×3の9マスを思考を巡らす1つの単位とし、それを合計で9個組み合わせています。具体的には以下のようなイメージです。
基本単位となるそれぞれの9マスの中では、その中央に位置づく課題(黄色や灰色のマス)を達成するために必要な下位の課題を思いつくまま記入していきます。
時系列という点では、多数の白色の課題に取り組むことで灰色の課題が達成され、同様に灰色の課題の達成は、最終的に黄色の目標達成につながるという流れになります。
このマンダラチャートを用いることで、ロードマップの作成を効率的に進めていくことができるはずです。
◆ マンダラチャートについてさらに詳しく知りたい方は、以下の「関連記事」もぜひご覧になってみてください。チャートから得られる6つの気づきについても解説しています。
○○であれば、誰もがマイペースで実施できる
この記事では繰り返しマイペースを維持することの難しさについて言及してきましたが、実は誰でも比較的容易にマイペースで取り組めるものがあります。それはズバリ「習慣」です。
「1日に本を30分読む」「1日に30分はランニングする」等、自分に合った難易度の習慣であれば、誰でもマイペースで続けていくことができます。
また、さらに重要なことは、そのマイペースで行うことができる習慣は、実はあなたの大きな目標を達成する上での実質的な取り組みとなっているという点です。
このことは、先に紹介したマンダラチャートを確認すれば一目瞭然です。大谷翔平選手が高校生の頃に作成したチャートを以下に再掲し説明します。
わかりやすい点として、中央下側に位置する3×3のマスを見てください。ここでは習慣として取り組める以下の小さな課題を達成することが、ゆくゆくは「運」を高めることにつながると示されています。
- あいさつ
- ゴミ拾い
- 部屋そうじ
- 道具を大切に使う
- 本を読む
- プラス思考 など
そして、運を高めていくことは、中央に位置づく黄色の目標達成につながると理解できます。
誰もが驚くほどの大きな目標を達成できるか否かは、マイペースで無理なく取り組むことができる習慣を、どれだけ多く意識的に実践できるかにかかっているのかもしれません。
まとめ
情報過多の時代、さまざまな魅力的な情報に振り回され、影響されながら、私たちはついついマイペース以上の姿で活動しがちです。
モチベーションが高まっている時はハイペースでの活動も可能ですが、明らかに無理のあるペースでの活動はいずれつづかなくなります。
落ち着いて長い目で見れば、ストレスをそれほど感じることなく、マイペースに行うことができる種々の小さな習慣が、目標達成の鍵を握っているといっても過言ではありません。
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