目標と似た言葉に「目的」というものがあります。この両者の違いを理解し、目標とともに目的を明確に設定する(意識する)ことで、あなたの目標達成の可能性はさらに高まることが期待されます。
この記事では目的と目標の違い、そして、目標に加え目的を明確に設定すべき理由についてわかりやすく解説していきたいと思います。
目的と目標の違い
両者の違いを一言で表現すると、目的とはある目標の達成を目指す理由であるということです。例えば、以下の例文の★★の箇所に位置づく内容が目的となります。
スポーツの大会で優勝を目指す。なぜなら、★★したいと思っているから。
富士山の山頂を目指す。なぜなら、★★したいと思っているから。
大学受験で東京の大学を目指す。なぜなら、★★したいと思っているから。
卒業後は学校の先生になりたい。なぜなら、★★したいと思っているから。
就職活動では大企業を目指す。なぜなら、★★したいと思っているから。
1,000万円以上の年収を得たい。なぜなら、★★したいと思っているから。
3年後に起業したい。なぜなら、★★したいと思っているから。
このようにして見ると、目的と目標は近い距離にある言葉ですが、その意味は決して同じではないことが分かります。
別の言い方をすれば、目標とは目的を達成するための手段であるともいわれています。さらに、時間軸を考慮していえば、目的は目標よりも先にあるもので、最終の目的地のようなものではないでしょうか。
目標の先にある目的の例文
次に、具体例をもとに目的への理解をより深めていきたいと思います。
先ほど示した例に目的をプラスして以下に再掲します。「なぜなら」の以降の部分が目的になります。
スポーツの大会で優勝を目指す。なぜなら、両親やコーチに恩返ししたいから。
富士山の山頂を目指す。なぜなら、日本一高い所に立ってみたいから。
大学受験で東京にある大学を目指す。なぜなら、若い頃は東京で生活してみたいから。
卒業後は学校の先生になりたい。なぜなら、教育の質の向上に少しでも貢献していきたいから。
就職活動では大企業を目指す。なぜなら、安定した生活を送りたいから。
1,000万円以上の年収を得たい。なぜなら、経済的に自由な生活を送りたいから。
3年後に起業したい。なぜなら、自分がどこまでできるか試してみたいから。
これらの例文からも、目的とは目標の先にあるもの、目標よりも長期的な展望であることがお分かりいただけると思います。
さらにいえば、ある目的が達成されるためには、複数の関連する目標が必要となることもあるでしょう。
ちなみに、私がこのブログを執筆する目的は以下のようになります。
自分が専門とする、自分づくり(人づくり)を支援するライフスキルコーチングの考えをより多くの人に知ってもらいたい。
そして、人づくりという面から、自分が生まれ育ったこの国の発展に少しでも貢献していきたい。

どうでしょう。目的へのイメージはわいてきましたでしょうか?
最後にもう一つ、この記事のアイキャッチ画像にある農家が抱く目的を想像してみると、以下のような感じになるのではと思います。
無農薬野菜の栽培にチャレンジする。なぜなら、安心して食べられる野菜を多くの食卓に届けたいから。
私たちはこれまで、部活動を含めて学校教育の段階から目標を設定することの重要性を教わってきていますが、目的についてはどうでしょうか。
私自身、「目的についても考えよう」と先生から言われた記憶はありません。。
確かに、目的とは人生における長期的展望・夢のようなものであり、自分自身の中ですぐに明確にできるものではないかもしれません。
ですが、以下で述べる目的を設定することで得られる効果からも、目標とともに目的は明確に設定すべきと私自身は考えています。
目的を設定することで得られる効果【図解あり】
目標に加え、目的を設定する効果を一言で表現すれば、目標達成に向けたやる気をより強化することができるになるでしょう。
これを図で説明すると以下のような形になります。
まず、私たちは目標を設定することで、達成に向けたやる気(モチベーション)が一時的に高まります。そのような効果を上の図ではピンク色の矢印で表しています。
そして、そのような効果は、目標と明確にリンクする目的を設定することによっても同様に得ることができます。
つまり、目標と合わせて目的も設定することで、より多くのやる気が喚起される・やる気が強化されるということです。
このモチベーションへの効果についてさらに3点ほど述べていきます。
「目標+目的」設定の効果1 : やる気を持続できる
先に、目標を設定するとやる気が高まると述べましたが、やる気とは生もので、一時的に高まったやる気は時間の経過とともに必ず低下していってしまいます。
そのため、確実に目標が達成されるようにするためには、やる気を持続する工夫や次の一手が必要となります。
そこで、目標に加え目的を設定することにより、やる気が長期にわたり継続することが期待されます。
また、日々のやる気の変動にあまり影響を受けなくなり、目標達成に向けた行動を無理なく習慣化していけるとも考えられます。
まさに、日々のやる気にかかわらず、目標の達成に向けて○○に取り組むのは当たり前といった形です。
「目標+目的」設定の効果2 : 困難に直面しても諦めない
目標を達成していくためには、数々の困難や課題を乗り越えていく必要があり、結果として諦めてしまう人もいれば、そうでない人もいます。
例えば、目標だけを設定している場合、見通しが悪くなってくると、また次の機会に頑張ればいいやと甘えが出てきてしまうかもしれません。
ですが、その目標の達成をなぜ目指しているのか。その目標の先に、さらにどんなことを実現していきたいのかという目的があるとどうでしょう。
困難に直面して一瞬弱気になったとしても、その先にある目的があなたの心の支えとなり、苦しい場面でも踏みとどまることができるはずです。
「目標+目的」設定の効果3 : 目標達成への覚悟ができる
目標とともに目的が設定されることで、目標達成への決意が固まるとともに、そこには一切の迷いも見られなくなります。
それはまさに、目標達成への覚悟ができている状態ではないでしょうか。
そのような時、人間は驚くほどの力を発揮できるとともに、周囲からは不可能と思われるような目標でも、達成することができるのではないでしょうか。
そのような目標達成に向けたエネルギーは、きっと誰もが持っているはずです。その力を発揮できるかどうかは、目標設定と、その先にある目的設定にかかっているといえるのではないでしょうか。
スポーツでこそ、目標に加え目的の設定を
スポーツにおいて優れたパフォーマンスを発揮するためには、身体的な能力に加え、心理的な能力(心理的競技能力)が重要であるといわれます。
また、心理的な能力の重要度は、実力が拮抗していくる上位レベルの戦いになればなるほど増してくるといわれています。
目標を設定し、モチベーションや士気を高めるという作業は、結論からいえばどのチームや個人も当たり前に行っていることです。
厳しい戦いを勝ち抜いていくためには、目標設定に留まらず、その先にある目的をも明確にし、モチベーションのさらなる強化、そして、覚悟を決めることが求められるのではないでしょうか。

目的を設定する上でのポイント
ここでは、目的を設定する上での重要なポイントを述べたいと思います。
それは目的の内容が、自分以外の誰かや社会のためになっているかということです。専門的にいえば、向社会的な目的ということになるでしょうか。
この記事の序盤で紹介した例の中であれば、以下の3つはそのような目的といえます。
スポーツの大会で優勝を目指す。なぜなら、両親やコーチに恩返ししたいから。
卒業後は学校の先生になりたい。なぜなら、教育の質の向上に少しでも貢献していきたいから。
無農薬野菜の栽培にチャレンジする。なぜなら、安心して食べられる野菜を多くの人の食卓に届けたいから。
私たちは自分のためはもちろんのこと、誰か人のために多くの力を発揮できるという特徴があります。そこに自らの存在価値を強く感じられるということもあるのではないでしょうか。
ここで述べたポイントは目的の必須事項というわけではありませんが、実際に反映されることでより実力を発揮することができ、確実に目標の達成を目指していくことができるはずです。
なでしこジャパン(2011)の事例
向社会的な目的の威力が顕著に見られた事例として、2011年のなでしこジャパンの大活躍を挙げることができます。
当時、澤穂希選手をキャプテンとするなでしこジャパンは、2011 FIFA女子ワールドカップドイツ大会において初優勝を飾りました。
延長戦、そしてPK戦にまでもつれ込んだアメリカとの決勝は、歴史に残る一戦であったと個人的には思います。
そんななでしこジャパンの原動力の1つとなったのは、東日本大震災で被災した東北の人々への想いだったのではないでしょうか。
当時、監督を務めた佐々木則夫氏によれば、震災後、選手たちからは『W杯で優勝したい』という声が聞かれるようになったようで、
女子サッカーで日本に元気を送りたい!
というのが一番の理由だったようです。
もちろん、なでしこジャパンの実力も十分に高かったと思いますが、東北や日本の人々に対する熱い想い(向社会的な目的)が、W杯優勝へのモチベーションをより強固なものにしてくれたのではないかと思います。
◆―関連情報―◆
2011年の東日本大震災となでしこジャパン 佐々木前監督が語る「あの時考えたこと」
目的を見出していくための手続きとポイント
ここまで、目的を設定する効果について述べてきましたが、自分が心から納得できる目的を明確に設定することは、意外と難しいと思われるかもしれません。
では、どうすればそのような目的を明らかにすることができるのか。最後に、自分が望む目的を見出していくための手続きとポイントを述べたいと思います。
手続き : 自問自答を繰り返していく
「この目標の達成を目指す理由(目的)は何か?」と、目的についてダイレクトに考え込んでいくのはかなりハードルが高い作業になってしまうでしょう。
その場合は、ある手続きを踏むとスムーズに検討が進むと思われます。それは見出しにあるように、自分自身に順に問いかけ続けていくというものです。
例えば、以下のような流れで自問自答を繰り返していきます。
【 ケース1 】
なぜ、自分は大学の教育学部に入学したのか? → 小学校の先生になりたかったから。
なぜ、小学校の先生になりたいのか? → 子どもたちと触れ合うのが好きだから。
なぜ、子どもたちと触れ合いたいのか? → 子どもたちの健全な成長をサポートしたいから。
なぜ、子どもたちの健全な成長をサポートしたいのか? → ??????
【 ケース2 】
なぜ、この企業の営業職を志望しているのか? → たくさんのお客さまと直接触れ合いたいから。
なぜ、お客さまと直接触れ合いたいのか? → 人のコミュニケーションを取るのが好きだから。
なぜ、人とコミュニケーションを取るのが好きなのか? → 人とかかわることで元気をもらえるから。
なぜ、人とかかわることで元気をもらいたいのか? → ??????
「??????」のところまでくれば、自分がいま現在、望んでいることが見えてくるのではないでしょうか。
このような自問自答において最も重要になるのが以下のポイントです。
ポイント : 一切の制約なしに本音で回答する
あなたが心から望んでいる目的を明らかにするためには、一つひとつの問いかけに対して、本音で回答していく必要があります。
現実社会ではいろいろな制約があると思いますが、せめて自問自答のタイミングでは、それらをすべて解き放ち、本音で自らの気持ちを言語化していくことが大切です。
数々の制約に遠慮して、また、いつの間にか変な思い込みができてしまい、あなたの本音は心の奥底に眠ってしまっているかもしれません。
『一切の制約がないとしたら…』、そのような前提に立ち、是非、あなたの本音の部分に粘り強くアプローチしてみてください。
◆ カテゴリー:思考

まとめ
目的とは、いま現在、あなたが懸命に取り組む目標の達成を目指す理由であり、目標よりも先にある長期的展望を表すものです。
一見、その内容を明らかにすることは難しそうですが、粘り強く自分自身と向き合いつづけることで、必ずその内容を明確にすることができるはずです。
目標とともに目的が設定されることで、目標の達成に向けてあなたの力はさらに発揮されることが期待されます。
また、その目的が誰かのためや社会のためであった時、あなた自身の成長はあなたの想像以上に促されるかもしれません。
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